第4話

ジオン自治共和国
MS-05 ザクⅠ (シャア機)
頭頂高:17.4m/全幅:8.2m
パイロット:シャア・アズナブル

小型融合炉を搭載した人型機動兵器としての完成度を求めた結果、先に開発されていたMS-04 ブグは量産化するにはコストオーバーな機体となってしまった。その状況を受けて、量産化と実戦配備に向けて再設計された機体が、MS-05 ザクⅠである。MS-04 ブグでは外部に配置されていた流体パルスシステム用の動力パイプを、攻撃を受けて損傷しないよう装甲内に内蔵しているが、その結果MS-04 ブグに比べて機動性や運動性の面でやや劣ってしまっている。しかし、生産性や整備性といった、戦場で多数の機体を運用するという面での問題はすべてクリアしており、初期量産型の機体は、独立戦争の開戦を待たずに月面で展開した史上初の対モビルスーツ戦「スミス海の戦い」に実戦投入されることになる。シャア・アズナブルの搭乗するMS-05も初期量産型のうちの1機である。開発責任者であるドズル・ザビの許可を得て、「暁の蜂起」以降に自身のパーソナルカラーと決めた「赤」の塗装が施された機体で、シャアは「スミス海の戦い」に参加する。




ジオン自治共和国
MS-05 ザクⅠ
(ガイア機、マッシュ機、オルテガ機)

頭頂高:17.4m/全幅:8.2m
パイロット:ガイア、マッシュ、オルテガ

トレノフ・Y・ミノフスキー博士は、のちにジオン公国軍の新型主力兵器となるモビルスーツ、その開発技術顧問であった。しかし、彼が地球連邦政府へ亡命するとの情報により、機密情報の漏洩を防ぐための亡命阻止作戦が展開された。ミノフスキー博士を保護するため、地球連邦軍が人型機動兵器を投入すると予測したキシリアは、これに対抗すべくモビルスーツ開発に携わっていたテストパイロットを招集し、MS-04 ブグと4機のMS-05 ザクⅠによる部隊を投入。ガイア、マッシュ、オルテガの3人のテストパイロットも、ダークグレーで塗装された初期量産型のMS-05 ザクⅠで参戦している。量産開始直後のMS-05 ザクⅠは、ガイア機とオルテガ機がザク・マシンガン、マッシュ機がザク・バズーカA1型を装備し、さらにMS-04 ブグ用のショートシールドを装着していた。月面のスミス海で行われた、初のモビルスーツ同士の戦闘によって得られたデータは、その後のモビルスーツ開発に活かされることになった。


ジオン自治共和国
MS-04 ブグ(ランバ・ラル機)
頭頂高:17.5m/全幅:9.3m
パイロット:ランバ・ラル

トレノフ・Y・ミノフスキー博士が実用化した小型融合炉と流体パルスシステムによってモビルスーツ開発は大きく進み、試作機であるYMS-03 ヴァッフが誕生した。YMS-03 ヴァッフで集めたデータをもとに、兵器としての機動性や運動性、生産性などを考慮した設計を行うことで、初の本格的な戦闘にも対応可能な機体としてMS-04 ブグが完成する。機動性の向上に直結する流体パルスシステムのエネルギー伝達用の動力パイプを装甲の外に配置し、四肢の関節駆動に使用するエネルギー量が多くなることで、高い運動性を獲得する。しかし、高性能な試作機の開発時にありがちな話だが、生産性を度外視した設計により、機体の生産コストが高く量産に向いていないため、制式量産機の座は再設計によって誕生したMS-05 ザクⅠに譲ることになる。MS-04 ブグは量産化こそされなかったものの、複数機が生産されており、量産機MS-05 ザクⅠに基本性能で勝るということから、モビルスーツ開発にテストパイロットとして関わっていたランバ・ラルは、うち1機を受領して使用。自身のパーソナルカラーである「青」で機体を塗装し、ガイア、マッシュ、オルテガ、シャアの4人と共に、月面のスミス海における戦闘に参加している。


地球連邦軍
RCX-76-02 ガンキャノン最初期型(鉄騎兵中隊 隊長機)
頭頂高:17.0m/全幅:8.1m
パイロット:エルドゥシュ中尉

地球連邦軍が主力兵器として運用していたMBT(メインバトルタンク)RTX-65 ガンタンク初期型の後継機として開発していた機体。ガンタンク初期型は戦車の砲撃性能に加え、フレキシブルな攻撃を可能とするマニピュレーター装着型の4連装機関砲を両腕に装備した人型の上半身を持つ戦車の発展型の兵器として誕生した。ガンキャノン最初期型は、ガンタンク初期型の砲撃性能をそのままに、下半身はより不整地走破性を向上させ、状況に応じて動きやすい歩兵的な運用を可能とする2足歩行型の兵器として開発されることとなった。そのため、人型機動兵器ながらあくまで火砲による攻撃を重視した兵器として開発されており、地球連邦軍における兵器としてのカテゴリーはガンタンク初期型と同じMBTとなっている。U.C.0078当時、サイド3(のちのジオン公国)が独立戦争に向けた新兵器として、人型機動兵器を開発しているという事実は地球連邦軍も察知していた。それに対し、地球連邦軍も同様の人型機動兵器であるガンキャノン最初期型で対抗することを模索していた。そこで地球連邦軍としては初となる新型MBTによる機動部隊『鉄騎兵中隊』を編成。エリートパイロットたちを集めた精鋭部隊として訓練が行われており、その鉄騎兵中隊の隊長という名誉が与えられたのが、エルドゥシュ中尉だった。エルドゥシュ中尉機は、中隊の指揮を行う隊長機として識別しやすいよう、一般機とは異なる目立つ彩りのマーキングが施されていた。


地球連邦軍
RCX-76-02 ガンキャノン最初期型(鉄騎兵中隊)
頭頂高:17.0m/全幅:8.1m

新型MBTとして完成したガンキャノン最初期型がベースとなったガンタンク初期型と最も異なっている点は、その運用思想にあった。ガンタンク初期型は、機動性に関してはあまり重視されず、長距離からの大口径砲による砲撃を主任務としていた。一方、ガンキャノン最初期型は、歩兵的な運用を想定しているため、機動性に加えて武装にも汎用性が持たされることになる。ガンタンク初期型の長距離砲撃能力だけではなく、中距離からの砲撃も重視している。装備を任務や部隊編成に応じて変更することができるように設計されているのだ。そして、3本指のマニピュレーターが採用された腕部は、各種武装の把持が可能。任務に応じた武装の変更を想定した設計がなされていた。鉄騎兵中隊は、3機でひとつの小隊が4個集まった中隊として機能している。

ジオン公国
MS-05S ザクⅠ(シャア専用機)
頭頂高:17.4m/全幅:9.0m(スパイク含む:9.4m)

ジオン公国軍は独立戦争に向けてMS-05 ザクⅠを量産することで、開戦に向けた準備を進めていた。MS-05 ザクⅠの武装に関しては、前腕部に固定するシールドと射撃用武器を装備し、接近戦では左肩に配置した肩アーマーを使った体当たりを行うことを想定していたが、機動試験データによっていくつかの変更案が提示されることになる。防御面では、より機体を防御する範囲を広くとることができる、右肩部に固定するタイプのシールドが開発された。攻撃面においては、左肩部のアーマーは、体当たり時にさらなるダメージを与えられるようスパイクが取り付けられたタイプが登場。武装に関しても、標準装備であるMS用マシンガン(ドラムマガジン式)やMS用バズーカA1型に加えて、背部に給弾装置を装着することでより弾数を増やしたMS用マシンガン(ベルト給弾式)が開発されることになる。これらの新たな装備は、MS-05 ザクⅠの問題点を洗い出し、急ピッチで開発されていた発展型であるMS-06 ザクⅡ用を想定したものであった。しかし、MS-06 ザクⅡの本格的な量産が開始される直前にジオン独立戦争が開戦してしまったため、一部のMS-05 ザクⅠにはこれらのMS-06 ザクⅡ用の装備を取り付けた特別機が戦場に投入され、そのうちの1機をシャアが愛機として使用していた。


ジオン公国
MS-05 ザクⅠ(キシリア部隊機)

ジオン独立戦争の開戦に伴い、ジオン公国軍の主力兵器として制式採用されたMS-05 ザクⅠ。通常仕様の機体に関しては、グリーンを基調としたカラーリングが施されていたが、一部の特別な部隊に関しては、所属識別を確認しやすいよう特別な装飾やカラーリングが施された機体が配備されていた。ジオン独立戦争開戦直後に、月面方面への進軍指揮を担っていたキシリア・ザビ少将が率いる親衛隊に配備されていたザクⅠは、頭部に鶏冠状の飾り「クレスト」を持ち、ダークブラウンの塗装が施されていた。通常、所属部隊の識別に関しては機体に書かれた機体ナンバーや所属部隊ナンバーが描かれたマーキングで確認するが、キシリア少将が率い、特別任務などを担うことも多い部隊の機体ということがあっての特別処置として通常とは異なる仕様になっていたと思われる。